痛いからできない?痛くてもできる?

施術の現場で、私が感じたことをつづります。プライバシー保護のため、事実を一部加工しております。

久しぶりに会った高校2年生の彼女は、足を引きずりながら、ダイニングテーブルに座りました。

腰をバレー部の練習で春に痛めたとのこと。その痛みが悪化して、秋には電車で立っているのもしんどくなりました。

いくつかの検査をしたあと、私は彼女に聞きました。「今の痛みを10だとして、どれくらいまで減ったら部活ができそう?」と。

「2か3」彼女ははっきりと答えました。

その数ヶ月後、痛みの程度は、7です。でも部活は再開しています。「ちょっと無理してると思います。えへへ」と笑いながら、施術を受けています。

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「手術するしかない」

痛みがひどくなった秋、近くの整形外科を受診して、椎間板ヘルニアと診断されました。

その時に医師から「あまりにもひどいなら、手術だね。」と言われたそうです。お母さんは薬をずっと飲み続けることや、手術以外の選択肢がないのか、心配でした。

一方の彼女は、「手術をすれば良くなる」と思っていました。県内でも有数の強豪校のレギュラーで、元々が頑張り屋さんの彼女でしたが、練習→悪化→休む→練習の悪循環に陥っていました。

処方された薬も、あまり楽になならない。だとしたら医師から言われた通り、手術だろうな、と考えていたようです。

施術を数回終えたある日、お母さんと彼女との3人で話し合いの時間を設けました。

お母さんから聞いた医師の説明や、彼女の日常の過ごし方や発言を聞いて、一度立ち止まって整理しようと考えたからです。

「うちの子、学校も休んだり遅刻するようになって」

彼女が痛めた症状についてや、鍼灸マッサージの説明だけではなく、彼女が一番気にしていた痛みについても説明しました。

話し合いで使った資料(一部加工)

ちょうど春頃から、彼女は部活の仲間と意見の対立もあって、お母さんはそのことも心配していました。「痛み以外でも部活のことで悩んでいるのでは?」と。学校を時々休んだり、遅刻する日もあったからです。

思春期らしい悩みと言えばそれまでですが、当人にとっては一大事。でも、親子だからこそ踏み込めない。私は3人での話し合いは、からだの症状だけ話すことにしました。でも少しだけ、その資料にあることを仕掛けました。

部活復帰チャート(一部加工)

選択肢に「部活を続けたい」を入れて、表情の変化や選ぶまでの時間などをじっくり観察することに。

彼女は少し時間をかけ、弱々しくですが「部活を続けたい」を選んでいました。

そんな彼女を見て私は「迷いはあるけど、できることなら部活をしたいのかも」と感じました。

本心はわからない。でも、その日の説明は、予定通り痛みや症状に焦点を当てることにしました。

彼女が選びたかった手術の盲点

施術初日、私はいくつかの質問をしました。

  • 引退試合の時期はいつ?
  • 進路はバレー関係を選ぶつもり?
  • 大学受験は一般入試?推薦入試?

バレーの引退試合はともかく、高校2年生になぜ大学受験の話などを聞いたのでしょうか?

どの程度の症状で部活復帰を目指すのかが、変わってくると感じたからです。

将来もバレーを目指すなら、怪我の回復が最優先になるし、受験内容次第では部活や施術の回数も変わってきます。

症状の回復に使える時間が、引退試合に向けた練習に重なるし、受験準備とも重なるかどうか、しっかり把握しておきたかったのです。

お母さんも彼女も、私の質問に最初は「?」でしたが、施術の回数や期間を提案するために必要だと伝えると、とても驚いていました。

「そこまでは考えていなかった」と。

でももっと大きな盲点があったのです。それをこの資料で説明しました。

リハビリには時間がかかる(資料を一部加工)

彼女は手術後すぐに復帰できると考えていました。

ですが、実際は練習復帰まで1〜2ヶ月の時間が必要だろうと、私は考えました。そして激しい運動はそのもっと後だろうと。

彼女はとても驚いていました。医師からは手術の話は聞いていましたが、それは痛みを取るための手段として聞いただけ。

その日は、気持ちの整理がついていなかったようです。痛みとどう付き合うか、落とし所を探る時間が始まったな、と私は感じました。

少しずつ気持ちが決まる

その後彼女は、お父さんの同僚から教えてもらった、有名選手が通う施術にも行ってみました。でも、よくならない。

別の整形外科にも行ってみました。結果は同じ「手術も選択肢」。

ただその病院では、手術後のリハビリ期間の説明がありました。私が彼女に伝えた話と同じでした。

医師も「いますぐの手術は必要ではないと思う」と、伝えたそうです。

手術を望んだ彼女からすると、手術では思い通りにならない話を続けて聞いたことになります。これは、彼女にとって気持ちが不安定になる情報になりかねない。

ですが、彼女は落ち着いていました。思い返せば、彼女はその頃から痛みを2まで下げることを諦めたというか、痛みを受け入れたような変化があったように思います。

練習にも少しずつ参加するようになったのです。そして今は痛みが出ると少し休憩をとりながら、レギュラーの練習をこなしている(!)とのこと。

「痛いからできない」なのか、「痛くてもできる」なのか

施術前、彼女は今も「痛い」と言います。よくよく話を聞くと、どう考えても過度な練習が原因です。

しびれも復活してきました。

原因を伝えると、本人は納得していました。私が「部活をしたい?」と聞くと、今はもう迷うことなく、大きく頷きます。

痛い。でもやりたい。そういう彼女を応援して、毎回できるところまで痛みが減るように調整します(痛みはゼロにはなりません)。

スポーツ障害に限らず、症状が辛い時に、我慢させたり頑張らせることを、私はおすすめしていません。

絶対に休んだ方がいい時期もあります。

中高生は元気で体力があると思われがちですが、コロナ禍で成長してきた子達です。

それまでの子どもたちとは成長の仕方が違います。無理をした結果、疲労感が残りやすかったり別の不調が出てきがちです。

体は一生ものですし、長い目で見た時は運動をおすすめしないことがある。

でももし今が、無理をするタイミングだと本人が思ったのなら。

見極めながらも、その無理の隣にいてあげたい。

今を生きる子どもたちであることを、心に留めて対応しています。

余談「あれは私も悪いんです」

ある日の施術で、ふと、部活の人間関係の話になりました。

私はその内容に驚いて、「それは先輩の対応がひどいわ。よく我慢したわね。私ならすごく怒る。めっちゃ呪いをかける。」と思ったままを口にしたのですが、その私を見て、彼女は苦笑い。でも、表情が少し柔らかくなりました。

「やっぱりやりたい?その練習を」とその後聞いた時、彼女はちょっと考えてから、「うん。頑張りたい」と。

そういう会話も彼女の背中を押していると、ちょっとだけ願っています。

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今回対応したメニューは、キッズケアとセッションです。
現在もまだ施術を継続しています。
最初の1ヶ月は、週に1回〜2回続けました。部活に復帰した今は、2週間に1回ほどです。ハードな練習をこなしているので、施術が、疲労回復や痛み改善にどこまで追いつくかは未知数ですが、やれるだけのことをやっていきます。

鍼灸は初めてだったので最初はとても緊張していました。最近は施術中に寝ています。

3人での話し合いは90分ほど。今後も必要に応じて行います。

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