【プロの本音】だから「こちらこそ」です

 友人のぢーこは文章を書くお仕事の人。ある日彼女が書いた記事を読んだあと、X(Twitter)のスペース(公開ラジオみたいなもの)で、その記事についてぢーこと話す機会がありました。ぢーこはそのやり取りを再び書いてくれました。

今回はその補足記事です。どこまで書けるか、自信が全くないのですが、読み手の皆さんを信頼して書いています。キーワドは「共同作業」。書かれていないことも想像しながら、私の意図を是非くみ取ってくださいませ。そのこと自体が「こちらこそ」が本当に言いたいことだから。たぶんだけど。

目次

きっかけはこちらの文章

ぢーこは地方在住のライターさん。ちょうど今引っ越しに向けて作業中。引っ越しにまつわるエピソードを書いています。

ぢーこの視点その2

その文章を読んだあとに、私たちが話した内容がこちら。

まずは、その2から抜き出します。

治療は、施術する人とされる人が、2人で作り上げるセッションで、施術を受ける側が協力的でないと、望むような効果が得られないことがある。
うまくいったと思う治療は、たいてい、受ける側が心を開いていて、協力的なのだそうだ。
同席されていたもう一人の治療家さんも、同じように感じるとおっしゃっていたので、これは、治そうとする人たちに共通の感覚なのだろう。

心を閉じている患者は、うまく治療できない。
だから、術者の意図通りに施術がすすみ、回復していく姿が見られると
「協力してくれて、ありがとう」
と治療する側も思うのだそうだ。
そういう意味で、「お世話になりました」に対する「こちらこそ」は、違和感がないらしい。
なるほど。

https://note.com/morusuke57/n/n9827f910d78e

めっちゃいいストーリーじゃないですか。
スペースという、ラジオのような空間でベラベラしゃべったことを、うまくまとめてくれました。

もう1箇所抜き出します。

一方的に受け取っているつもりでも、実は双方向に影響を与え合っていることは、他にもあるのかもしれない。

https://note.com/morusuke57/n/n9827f910d78e

ではここから先は、私が補足したい内容です。

自分が誰かの役に立つということ

私の場合ですが、そもそもこの仕事を続けていられるのは、自分自身のためです。

技術や知識を学ぶことが楽しい。昨日よりも今日、針が美しく打てたら嬉しいし、お灸の大きさが狙った通りだったら嬉しい。

数十兆もの細胞が連携して、1人の人間を支えていることに魅力を感じます。人間は生きる質にもこだわる。私もその当事者だし、隣の人も同じ。面白いな、難しいなーと考える時間が面白くて仕方ありません。

もちろんお金のためでもあります。子どもたちがやりたいことを支えたり、生きるために必要なお金を作るために働いています。本音で言えば、仕事は自分を満たすための欲の塊です。

だけれども自分を満たすだけでは、その欲は満たされません

私を必要としてくれる人がいて、その人の想いを満たすことがしたい。という欲。

例えば赤ちゃんを授かる、ぎっくり腰や肩こりが治る、新型コロナ後遺症の症状が楽になる。誰かの困りごとにズバッと結果素出せるような鍼灸マッサージ師を目指して、技術や知識を磨いてもいます。

「こちらこそ」には「ありがとう」が隠れている

だから頼ってもらわないと成り立たない仕事です。依頼がなければ生活ができないし、技術の磨きがいもない。

クライアントが来てくれること自体が「ありがたい」です。上に書いたような自分の欲を満たしてくれるから。

というわけで、ぢーこがその1で書いたコレ、意外と合っていると思っています。

「いつも当院をご贔屓にしてくださり、ありがとうございます。おかげで経営が成り立ちました」的な意味あいだろうか。
持病のある人というのは、確実なリピーターであるため、次年度予算を考える時など、収入として見込める良い客ではあろう。
いわゆる「太客」ではないけれど、地味に経営を下支えしてきた自負がある。
……かというとまるでそんなことはない。
これではないな。

https://note.com/morusuke57/n/na24161bc03e4

いや、これです

病気を治す仕事は、困っていて初めて意味がある仕事だけに、存在自体はちょっと不健全かもと思う時があります。でも私はこの仕事を選びました。ぢーこが通ったお医者さんも同じだと思うんです。

ぢーこはきっと、そのお医者さんを経済的に支えてくれている1人でもあっただろうし、自分の想い(クリニックで人の役に立ちたい)を使ってくれる人でもあった。

それは「ありがとう」だと思いました。「こちらこそ」にはその前か後ろに「ありがとう」が隠れている。私もその気持ちで伝えています。

もう一点、その2で書かれたように『すべてを投げ出し、自分の情報を何でも渡す気満々』でいてくれたのも、助かるだろうなと想像しました。

例えば鍼灸マッサージの仕事でいうと、腰や肩痛いから治してくれと依頼が来ても、ただその部位に刺激をすればいいわけじゃなくて、大きな病気が隠れていないか、どの程度の刺激が効果的(嫌いにならないか)、などなど頭をフル回転させています。

私の場合は聞きたいことは山ほどあります(ちなみに、問診をしないで見立てる方法を長年学んできました。その方法も使いますけど、クライアントが最後腑に落とすには言葉のやり取りに意味があると思っています)

なんでも答えてくれる状態は助かります。そんな時の「こちらこそ」はやっぱり「ありがとう」が隠れているはずです。

「ありがとう」を言わない立場

ここで疑問に思われた方がいると思います。なぜ「ありがとう」と返さないのか、と。

「こちらこそ」は、病院や鍼灸マッサージ院だけじゃなくて、多くの場面で使われているようです。ぢーこの文章を読んだ学校の先生や他の自営業の方も「こちらこそ」と言うとコメントしていました。

そういえば若かりし頃、見習いに入った鍼灸院で「ありがとうと返すのは禁止」と注意されました。相手は治してもらいたくて来ている、その人に失礼だと。

困りごとを助けて欲しい時って、結果が出る人に頼りたいじゃないですか。名医とかゴッドハンドとか、権威ある人に頼りたくなる気持ちは、バカにできません。「この人のおかげで治った」と思えたり、「この人に頼って結果が出ないなら仕方ない」と諦めがついたり、人が困りごとと向き合うのに権威性とかポジションは意外と大事な役割を果たしています。

ありがとうを言わないことは、プロとクライアントとの上下関係を作ってくれます。相手の良くなりたい想いの利益になるなら、言わないことも必要かもしれません。※誤解してほしくないのですが、権威性が大事とは言っていません。自分に必要な力を引き出してくれるなら、ポジショニングも甘んるという意味です。

私より若い人たちはたぶんこの権威性をあまり重要視していないんじゃないかな。時代は変わってきています。そういう意味では「こちらこそ」は若いプロの方は違う意味を持っているかもしれません。

今は領収書を渡しながら「ありがとうございます」と言っています。やっぱりお金をいただくことはありがたいから、そのお礼はしっかりと伝えています(言い忘れている時もあります。ごめんなさい)。

心は自然に開く分量がその時のベストな量

ここまでを書くのにかかった時間は数時間。これ、ふだんからすると圧倒的に短いんです。

私にはいろいろなコンプレックスがあって、今頭に浮かぶ二大コンプレックスが、整理整頓と文章。

どんなに本を読んでも、望むような空間や文章が書けないんです。

でも今回は早かった。ぢーこのおかげです。

ぢーこが「ねえいっちゃん、聞いてもいい?」と語りかけてくれた日には、なんでも答えちゃう。ふだんは文章を書くのにすごく時間がかかるのに、スラスラ出てきます。

これが2人がともにお世話になった敏腕編集者の依頼だと、全く無理です。何週間もパソコンの前に座って、時に泣きながら(実話)書き上げます。そりゃ没になりますわな。。

心を開くって簡単じゃないです。相手を選ぶし、相手ともその日のお互いの気分や体調で開き具合が変わります。

それが心の普通の状態。

だからぢーこの文章、ここは注意してねと思った表現がありました。

うまくいったと思う治療は、たいてい、受ける側が心を開いていて、協力的なのだそうだ。
(中略)
心を閉じている患者は、うまく治療できない。

https://note.com/morusuke57/n/n9827f910d78e

困りごとを抱えている人がぢーこと私の文章を読んで、「そっか、相手をいい気分にさせたらうまく行くんだ」と思わないで欲しい。

いや、そう読めないよと思う人もいるでしょうが、困りごとに真剣に悩んでいる時は、成功への最短法だけを探して探して探しまくります。表面的なハウツーやメッセージだけが届いてしまう。

頑張って心を開こうとしないでくださいね。うまくいかない時に心を閉じている自分を責めないでくださいね。

心は誰しもが持っているものなのに、繊細で用心深い。自分自身にすら本当の姿をなかなか見せてくれません。相手がいたらなおさらです。

共同作業だから「こちらこそ」

ここまでお読みくださりありがとうございます。

まわりくどい言い方をしていますが、一貫して書いているのは、空間で起きているものは全て互いに影響しあっているという事象についてです。私とあなたがいて、どちらか片方だけでは成立しません。

本音を書きますと、この文章を書きながらただいま絶賛自画自賛中です。こんな文章よく書いていることに満足しています。

でも私1人では書けませんでした。ぢーこがいてくれて、もっというと、その場に鍼灸師仲間のハルコさんがいてくれてそこで生まれた言葉があって書けました。

だから私はぢーことハルコさんに引き出してくれて「ありがとう」と言いたい。きっと彼女たちは「こちらこそです」っていうと思うんです。

その「こちらこそ」にはどんな意味があるのかな。光栄です。という意味がある気もするな。













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