受験生たち、いよいよ本番です。一人一人の道を、懸命に歩んでいます。その中で、受験生を支える立場の反省点が見えました。今回は、大学選びや受験対策の前に読んでほしい記事です。特に高校2年生の保護者と、お子さんたちに届くことを願って書きました。
いよいよ本番。動き出すはずが
昨年の12月は、一般入試以外のAO受験や指定校受験の合格発表が続きました。
一般受験は、これからが本番。1月の共通テストをスタートに、2月いっぱい続きます。
そんな中で、私がキッズの身体反応をもっと掘り下げて理解するべきだったと反省するケースが続きました。
想定外のイタチごっこ
受験生たちの、年末年始の症状をまとめます。
- 朝起きられない・夜寝られない
- 日中ボーッとして、勉強に集中できない
- 頭が重い
- しんどい
- お腹が痛い(下痢や便秘も)
- 持病の悪化
- 肩こり腰痛・頭痛
- 食いしばりが辛くてずっと顎を触っていたい
週一ケアの子たちも症状があちこちに移動して、まるでイタチごっこのようでした。
身体に過度な負担をかけずに、緊張や集中力が保てるのは、3ヶ月ほどです。
当初は、年末年始を、身体にエンジンをかけて集中していく時期と想定していました。実際にそうなった子もいます。でも、一見順調に見える子にすら、身体の不調が起きました。
頭に負担がかかり、身体も重だるい
鍼灸マッサージは、一つの症状に対応することも得意ですが、症状をまとめて整えることも得意です。イタチごっこの場合も、ケア方針を組み立てるのは難しくありません。
症状はみんな違うのですが、彼らには共通点もありました。
受験生たちは、身体が緊張して頭がボーッとしていました。東洋医学的な見立てでは、気滞と頭部瘀血と不安感や焦りからくる消耗と捉えました。
気滞は、何かがスムーズに動いていない状態を表しています。それが心なのか身体なのか、両方かは他の所見や聞き取りから総合的に判断する情報です。頭部瘀血は、副鼻腔炎やアレルギー性鼻炎などでも起きますが、長時間の動画やゲーム、考えすぎている時や、運動不足で起きることもあります。
また上半身の緊張が強くて、首と後頭部の境目は押すと痛く、腕も張りがちでした。
興味深いことに、顎からこめかみ、頭皮の緊張も強い子が多く、噛み合わせや食いしばりは来年以降の子達も注意してみることにします。
頭の針&足をもむか、お尻に針
マッサージがメインになる子もいれば、鍼灸だけの子もいて、メニューはバラバラですが、頭に針を打つことが多かったです。
針は、霞針(かすみしん)と呼ばれる0.12ミリの針を20〜30本ほど使いました。頭の生え際から、頭頂部とこめかみにかけて頭の形に沿うように刺し、必要な時には顎まわりも1センチほど刺しました。
よほど頭が疲れていたのでしょう。最初は怖がっていた子たちも、今ではほぼ全員が抵抗なく受け入れています。中には打った瞬間から爆睡する子もいました。
マッサージでは、頭に針を刺したまま足先をじっくり刺激しました。足がゆるんでくると全身がゆるみます。ゆるむ速さは、全身の緊張度合いと関係しています(と私は考えます)。片足に15分近く時間がかかったということは、それだけ緊張が強かった証拠です。その後、手の指や肘肩甲骨を刺激し、針を抜いた後に、頭と顔周りも刺激しました。
鍼灸では、頭に加えて手と足に針を打ちました。体調によっては針に電気を流すこともありました。うつ伏せでは、背中からお尻に針を刺し、お灸を加えました。頭の疲れには下半身の緊張をゆることも欠かせません。小さく捻ったお灸でお尻を少しずつ温めました。
何が起きていたのだろう
このように対応して、終わった直後はスッキリいい表情でした。施術後は予定通りの反応でした。
ところが、次の施術では症状がもっと増えていました。
私は自問自答しました。何が起きているのか、どうしたらいいのか、と。
詳しい内容は書くことができませんが、キッズたちとの会話の中にヒントがありました。
決して自己管理が悪かっただけじゃありません。受験や大学生活や将来をすごく考えていて、でもどうしていいかわからずにモヤモヤしている状態の子がほとんどでした。
中には今までの生活を後悔する子もいました。もっと勉強すればよかったと嘆いた子もいれば、もっと志望校をしっかり選べばよかったと思っている子もいました。
誰よりも自分たちが生活リズムが乱れたことを責めていて、焦りもあって、でもどうしたらいいかわからずに消耗している印象を持ちました。
身体ケアだけでは足りないのか?
鍼灸マッサージは身体をケアします。心と身体は連動するから、身体がゆるむと心もゆるみます。受験生のケアは、両方がゆるむように特に気をつけて見ているつもりでした。
でも、それだけでは不十分でした。
鍼灸マッサージのアプローチが間違っていたと言うよりは、受験生にとって本当に必要だったケアが足りていなかったと感じました。もうこれは関わっている大人全員の課題というしかない気がします。
今年の受験生キッズには、我が子も含まれています。
整えてもイタチごっこになった一人です。親としてもこの状況にイライラモヤモヤしていました。
そんな中、我が子の志望動機書を手伝う機会がありました。
なぜその学部を志望するのか、自分が経験してきたこと、どんな特性があるのか、などを1000文字前後で書くものでした。
最初は、小学生の夏休みの思い出作文のような文章を書いてきました。そこから少しずつ本音を出すようになって、その度に書き直しました。
最終的には、小学時代のエピソードと絡めてコロナ禍に工夫したことや、今後学びたいことを自分の言葉で書き上げました。
清書まで含めると1週間以上時間を使っていて、「この時期にやるなんて」と怒っていたけど、文章を書くことで進路がこれでいいのか、もう一度考える時間になったようです。
他の子同様に体調を崩していましたが、文章を書き終えた後は時間の使い方が変わってきました。表情からも、迷いが減っているようでした。
今日現在も体調は不安定なままですが、焦ってはいないようです。
偏差値や受験科目で選ぶと、身体が辛くなる
私の仕事は、身体を整えることです。子どもに限らずですけど、整わない時には理由があります。
大きな病気が隠れているかもしれない。
気持ちに迷いがあるのかもしれない。
受験生たちが抱えたモヤモヤは、十分に自分の気持ちと向き合えていないことも原因だったかもしれない。
中には何も考えずに点数で行ける大学を選んでいる子もいます。苦手な受験科目を避けたくて学部を選ぶ子もいます。
そんな選び方も決して悪くはないのだけど、違和感があるのなら、大人がその子の悩みや気持ちをじっくり聞く時間が必要だったかもしれません。
身体は、自分の気持ちの沿わない時、体調不良や生活リズムの乱れとしてサインを出すことがあります(もちろん逆もあって、身体や生活が整うと、心が軽くなるケースも多くあります。)その仕組みを知っていた私が、不調の背景を十分にキャッチし切れていなかったし、伝え切れていなかったと、反省しました。
来年度受験生になる保護者の方へ
今年度の経験からわかったことをまとめます。
身体は、大きな病気を除いた場合、気持ちが整っていれば簡単にケアできて、効果も持続します。受験期間もセルフケアと組み合わせることで十分対応できます。
ただ、気持ちが揺らいでいる時は、言葉にならない迷いを身体症状として自覚することがあります。その場合は、身体がゆるんでも、すぐに別の症状として現れます。
気持ちを整えるのは、本人一人では困難です。子どもの世界は狭く、選択肢や長期的な見通しが提案できるのは大人の仕事です。学校や塾ではそのサポートが望めません(いい成績を取らせることが仕事だからです)。
そこで、来年度受験生になる保護者の方へご提案があります。
お子さんに次のような問いかけを始めてください。
- なぜ大学に行きたい?
- なぜその大学(学部)?
- 何を頑張ってきた?
- どんな生活を送りたい?
高校2年の今頃は、専門性はおろか、大学に行くかも実感が持てません。部活中心の子の場合は、考える余裕もないでしょうから、問いかけてもびっくりするくらい曖昧な答えだと思います。我が家も同じ。本音が出てくるまでに18年時間かかっています。
ですが、ここから先1年間、ぜひ繰り返し聞いてあげてください。AOや推薦の場合は早いと半年しかないので、今からでも全く遅くないです。
その際にテクニックとして2点、おすすめしたいことがあります。
自分の価値観で子どもの言葉を遮らない。
〜ができる(得意)・できない(不得意)で、選択肢を与えない。
親だからこそ難しいのも事実なので、他の身近な大人で十分でしょうし、心のケアの専門家も選択肢かもしれません。ちなみに、保護者のケア(身体も心も両方)も大事だと痛感しています。むしろ最優先かもしれない、と、受験生たちを見ていて思いました。
今年関わった受験生たちは、誰もが自分の人生を真剣に考えています。体調や生活リズムの乱れは、その証でもあると感じます。彼らの姿を通して、大人がやるべきことは、自分の人生と子どもの人生をそれぞれ真剣に考えることかもしれません。
受験生だから特別なメニューを組んでいるわけではありませんが、症状によってはセッション時間を追加しています。
また保護者の方を優先した方がいい場合は、お申し込みの際に詳しく伺ってご提案します。