ーーSNSではゆるツボの裏話が好評ですが、今回ライターの友人、通称ぢーこ、にお願いして記事にしてもらいました。これを読むとゆるツボのことがよくわかると思います♪
★ゆるつぼ見聞録★
いっちゃんファンならば、この一年くらいの間にいっちゃんが立ち上げた「ゆるツボ」のことはご存じであろう。
名前は知っている。発信している内容も読んでいる。何ならゆるツボTシャツも買った。
そんな人も多いと思う。
けれど、ある日唐突に表に現れたその「ゆるツボ」は、隠しているわけではないと思うのだがとにかく謎だらけなのだ。
そもそも「ゆるツボ」って何なの?会社?自営業の屋号?団体名?商品名?
どうして鍼灸マッサージ師であるいっちゃんが、広げることで自分の仕事を減らしてしまいそうな「ゆるツボ」セルフケアに力を入れているの?
どうして国家資格まで取って仕事にしているいっちゃんが「だいたいで効く」なんて大雑把なコピーを打ち出しているの? 偉い人に怒られない?
ビジネスパートナーである「ゆるツボちゃん」とはいったい何者なの?
ツボやお灸にかわいさを追求しているのはなぜなの?
パッと思いつくだけでもこれくらいある。
「天才の考えることは、凡人には計り知れないから」の一言で片づけてしまえば簡単なのだが、それだけでは終わらせたくない。
たいていのことには、因果律というストーリーがあり、因果律はその世界から遠く離れたよく知らない人ほど面白い。
つまり、ゆるツボの謎には、私が聞いてもほかの誰が聞いても面白いに決まっている話が眠っているはずなのだ。
そんなわけで、私はゆるツボについてのお話をいっちゃんに直接聞くことにした。
ブランドキャラクター的な架空の人物なのかと思っていたゆるツボちゃんもちゃんと実在していて(!)同席してくれるという。
これは根掘り葉掘り聞き出すしかないではないか。
4月のある日、私はいっちゃんとゆるツボちゃんとZOOMの画面越しに向き合った。
以下はその時の話を私の脳内で再構成したものである。(以下、「い」=いっちゃん、「ゆ」=ゆるツボちゃん、「ぢ」=ぢーこでお送りします。)
ゆるツボちゃんて、どんな人?
い「こんにちはー。今日はよろしくお願いします。ゆるツボちゃん、こちらぢーこです。ぢーこ、こちらがゆるツボちゃんです」
ぢ・ゆ「よろしくお願いしまーす」
ぢ「さっそくですが、私、前からゆるツボちゃんに興味津々なんです。いっちゃんとはどういうご縁でビジネスパートナーに?」
い「もともとは私たちの子どもが、通っていた幼稚園の同級生だったってところからスタートしています」
ゆ「当時からいっちゃんは奇麗で頭がよくてあこがれの存在で、私なんかがお近づきになれるとは思ってなかったんです」
い「ちょっと。笑」
ぢ「それが仲良くなったきっかけは?」
い「園の保護者に割り当てられた仕事があってどうしても行かなくちゃいけない時に、私のつわりがひどくて動きたくない時期が重なっていたの。ゆるツボちゃんがそんな私を見かねて、車で送迎しますって言ってくれたのが最初でした」
ゆ「なんか、具合悪そうな人とかわかっちゃうんですよ。ほっとけなくて」
ぢ「遠くからあこがれて見つめていた人に勇気を振り絞って声をかけた、と」
ゆ「そうそう」
い「ちょっと。笑」
ぢ「そこからずっと仲が良いんですか? もう10年くらいのお付き合い?」
い「出会ってからはそうですね。でも仲良くなったのはもっと後です」
ぢ「おお。じゃあそのきっかけは何だったんでしょう?」
ゆ「上の子が小学校二年生の時、共通の友人を介して治療家のいっちゃん先生を紹介してもらったところからです。その当時、私はメンタルも病んでいてもう死んだ方がいいとずっと思っていたのを治療で救ってもらったんです」
ぢ「あれ? すでに友達だったんですよね? 友達の紹介ってどういうことですか?」
ゆ「恐れ多くて自分からいっちゃんに依頼するとかできなくて、共通の友達がいい先生いるよって教えてくれたのがいっちゃんで、それに飛びつきました」
い「ちょっと。笑」
ぢ「救ってもらったっていうのは、心を?」
ゆ「そうです。治療してるのは体なのに、どんどん心も楽になっていって、体に何をしてるんだろう?どうして楽になるんだろう?ってずっと気になっていました」
ぢ「そこから、ツボに興味を持ち始めたんですか?」
ゆ「そうですね」
ゆるツボTシャツが生まれるまで
ぢ「ツボのTシャツを作ろうっていうのもゆるツボちゃんのアイデアだったんですか?」
い「それは外からのアイデアです。2020年の春に外部の方が『ツボをプロットしたTシャツと使い方のDVDをセットで販売したいから作ってくれないか』という提案をくださったんです。その時セットで9800円で売ると聞いて、ゆるツボちゃんに打診してみたら『その金額だと主婦は買えない』と言われて、お断りすることにしました。やっぱり作るからには誰でも使えるものがいいなと思って」
ぢ「なるほど、そりゃそうですね」
い「それで私が確定申告から逃避してた時に、ツボは骨か筋肉か?って検証したのをふと思い出して」
ぢ「骨か筋肉か? どういうことですか?」
い「ツボってWHOが認定しているものだけでも361個あるんですが、私はそれらのツボはほとんどが骨に沿ってあると思っていたんです。だから押す時も骨に向かって押すのだと人に伝えていました」
ぢ「なるほど、それが骨か筋肉か問題なんですね」
い「そうです。確定申告が嫌すぎて『そういえば、あれはどうだったっけ?』と思い出して、骨か筋肉か問題をゆるツボちゃんに話してみたんです。そしたら彼女が『ツボ単』っていう、鍼灸学生のバイブルになっている本をもとに、ツボの名前と位置を全部Excelに落とし込んでくれました」
ぢ「それはすっごい大変そうな」
い「大変だったと思いますよ。ツボの名前に使われている漢字って普通に変換しても出てきませんから」
ゆ「JISコードで入力してました」
い「笑。JISコードなんて私は思いもつかないので、こういうところが本当にすごい。せっかく入力してもらったのでそれを検証しようってことで、一つずつツボを押してみて、ここは骨だろうか、筋肉だろうかと二人で夢中になって確認していました」
ぢ「確定申告もせずに?」
い「はい、せずに。結果としてはその時、骨と筋肉はだいたい半々くらいだったことがわかりました。あとツボの4割がひざの下とひじから先に集中していることもその時わかった成果です」
ぢ「いっちゃんの『骨に向かって押す』のが正しいという仮説は崩れたわけですね。」
い「そうです。やってみないとわからないことでしたね。いったんは無しになったTシャツ作成プランでしたが、自分たちでやっぱり開発しようと思いました。で、家にあった白Tシャツと丸いシールを持ってゆるツボちゃんと会議をしました。Tシャツを背中に広げて赤青緑のシールを貼って着てもらって押して微調整する、みたいなことを延々していました」
ぢ「途中から、Tシャツのかわいさにこだわるようになったように見えましたが」
い「そうですそうです。私は仕事柄つい、正確なツボの位置取りを気にしてしまっていたんですが、夫でツボの位置を出したTシャツを、私も着て押してもらったら気持ちがよくて。そして子どもに着せて押してもまた気持ちがよくて。これワンサイズで子どもから大人まで使えるものが出来るかもと、その時発見したんです。そしたらゆるつぼちゃんが『ツボの色がかわいい方がいい』とぽつりと言いまして。頭をぶん殴られたような気がしました。これまでさんざんツボの位置を悩んできたのに、そこか??と。笑」
ゆ「せっかく作るなら着る気になるものがいいし、ツボも押したくなる色がいいなと思って」
い「ね。こういうところですよ。私はどうしても自分の世界の中でものを考えがちなので、鍼灸師として商品を作るならツボの正確さが大事とか思っちゃうわけです。でもゆるツボちゃんがくれる一言は、さっきの『主婦は買えない』にしても『かわいい方がいい』にしても、外からの一撃なんですよね。固定観念を覆してくれるというか。結果的にそっちの方が多くの人に喜ばれるアイデアだったりして。だから、ゆるツボちゃんは、対等なビジネスパートナーっていうより、ゆるツボちゃんがぼそっとつぶやくことを私が全力で具現化している下僕のような関係なんです」
ゆ「恐れ多い…」
ぢ「なるほどー。開発前からユーザーの声が聞けているようなものですね。」
い「そうそう。それに可愛さにこだわるって実は大事で、私の出張治療は女性と子ども、つまりほとんどがお母さんなんですよね。子育て中のなりふり構わない時期だからこそ、少しでもかわいいものでテンション上げたいし、女の人は可愛いものを見るだけで気分が上がりますよね。だから、ゆるつぼでは可愛いが大事なんです」
ぢ「可愛さが大事なんですね」
い「そうです。それに、試行錯誤した結果、ワンサイズで作っても気持ちがいいことがわかった。だからその先を工夫していけました。」

ゆるツボ手ぬぐい開発秘話
ぢ「今度の商品は手ぬぐいですが、それはどうして手ぬぐいという形にしたのですか?」
ゆ「最初は手ぬぐいにもゆるツボTシャツと同じように背中の押して気持ちいいところをプロットしたんです。手ぬぐいならTシャツを作るより安い値段でできるし、着替えなくても上から載せるだけでツボが押せるし、いいことづくめだねって、Tシャツの代替品として作り始めたつもりでした。でも手ぬぐいはTシャツより長いのでスペースが余っちゃったんですよね。それで、この余ったところを何かに使えないかってことで考えてひざ下と肘から先のツボを押すように丸を追加しました。そこから使い方を工夫していったんです。」
い「そこも、ゆるツボちゃんと私でカフェにシールを持ちこんで、シールの大きさや配列を考えました。シールは直径何ミリだと小さすぎだとか、何ミリだと大きすぎだとか。形は四角だと押したくなくなるからやっぱり丸がいいとか。そのうち、隙間なく並んでいると気持ち悪いってゆるツボちゃんが言って」
ゆ「すみません。集合体恐怖なんです」
い「そういうあれこれに対応することで、想像していなかったことを一つずつ工夫していきました。鍼灸マッサージ師の一方的な発信ではなくなってきたので、私はゆるツボちゃんがいてくれて助かったと思ってます」
ぢ「確かに発売前に商品の弱点が潰せて助かりますよね。ところで、集合体恐怖はどうやって解決したんですか?」
い「丸の間隔を調整することと色を変えることで、気持ち悪くない配置を実現しました」
ぢ「おおお。解決策ってあるものなのですね。密集している丸が全部だめなのかと思ってました。」
い「そうですね。いろいろ試行錯誤です。試行錯誤と言えば、この丸の数も相当試行錯誤しました」
ぢ「え? 丸の数ってツボの数じゃないんですか? 変えてもいいんですか?」
い「ツボはだいたいで効くから。笑」
ぢ「あ、そうでした。だいたいで効くんでしたね。じゃあ、たくさん押せるところがあった方がいいんじゃないですか? 押せば押すほど効くのでは?」
い「そこがむつかしいところで」
ゆ「たくさんあると、押す方が疲れちゃって全部押せないんです。そうすると申し訳なくなるじゃないですか」
ぢ「申し訳ない?」
ゆ「私みたいに自分を責めやすい人って絶対いると思うんですが、そういう人はどんなことでも自分を責める材料にするんですよ。丸が30個あったら30個全部押さなくちゃいけないって思うのに、疲れて28個でやめちゃったら『ああ、私はあとたった二つが押せなかった。なんてダメなんだ』って落ち込むんです。だから、そうならないように、疲れない数にしないといけなかったんです」
い「罪悪感を感じさせない数を割り出す必要があったんです。そして達成感にしてほしくて。だから試行錯誤」
ぢ「なるほど。じゃあ逆に数を減らして、WHO認定のツボだけをピンポイントでプロットしたらよかったのでは?」
い「一つのツボにかける負荷が高くなる分、指を痛めやすいんですよ。治療家ならだれでも通る道なんですが、マッサージの経験が少ないと加減がわからなくて、どうしても『なおしてやろう、ほぐしてやろう』って力を入れて押すでしょう? ツボの数が少なければなおさら、一つ一つをぐいぐい押しがちになる。治療家は親指の関節を痛める人が多いんですよ。人を気持ちよくさせるために自分の体を痛めるって本末転倒ですよね。だから、そうならないように見ただけで『先は長いな』と思って力を分散できるくらいの数が必要なんです」
ぢ「深いですねえ。そこまで考えて作っていたなんて」
い「配色もこだわりました。たぶん、そこだけで二、三か月かけてると思います。持ち歩きたくなる色、押したくなる色、それでいて可愛い色を模索しました」
ゆ「大変でした。押したくなる色って言われても困っちゃって。」
い「でも、私たち『これだ!』っていう感性も『これじゃない!』っていう感性も似ていて。だから、二人が一致するまでいくらでも時間をかけられてよかったです」
ぢ「二人の自信作なんですね」
い「はい。本当に自信作です。今後は色違いの手ぬぐいも出来たらいいなと思っています。」
ぢ「Tシャツにはなくて、ツボ手ぬぐいならでは使い方もあると聞きましたが?」
い「ツボTを買ったくれた友人が『自分で背中を押せない。一人ではこれが使えない』って嘆いていたのを聞いて、ここはツボ本来の出番だ!と思ったんです。そこで手ぬぐいは一人で出来る使い方をたくさん提案しました。」
ぢ「どういうことですか?」
い「さっき、ゆるツボちゃんがツボをExcelに入れてくれた話の時に、ひざから下と肘から先に体のツボの4割が集中してるって話をしたじゃないですか。 あれ、ちょっと不思議だと思いませんか?」
ぢ「ああ。たしかに。ひざ下と肘から先を除いた体の表面積が6割ってことはないですもんね。どれだけ手足がでかい人でもそれはないですね」
い「でしょ? どうしてそうなっているかというと、ひざ下と肘から先が万能だからなんですよ。この部分を刺激するだけでわりと色々な不調に対応できちゃう。背中が凝ってるとき背中を直接ケアしなくても何とかできちゃうんですよ。だから一人で刺激できる部位に使える手ぬぐいって、ツボ本来の役割を引き出せると思ったんです。そういう意味で手ぬぐいは、ツボTシャツと同じで背中にも使えるし、一人でケアしたい時にも使える商品になりました。」
ぢ「へえええ! それはすごい! そんなすごいものだと逆に禁忌とかないんですか? これは絶対しちゃダメみたいなことは?」
い「ありますよ」
ぢ「あるんだ!! 北斗の拳の秘孔みたいなやつがあるんですね! 突くと死んじゃうツボが!」
い「笑。それはないです。」
ぢ「ええーっ。ないんですか。」
い「いや(笑)、注意が必要なツボや部位は存在します。ゆるツボTシャツで言うと、背中の真ん中のグレーの丸は押しちゃダメなところです。あれは背骨に沿わせるガイドラインなんですが、背骨きわのマッサージは、セルフケアではおススメしていません。私も鍼灸の学生だった頃に押されて気持ち悪くなったことがあります。男性のように体力がある方が力を入れすぎて押した場合は骨折させてしまうリスクもあります(だから強く押すのはNGとしてあります)」

結局「ゆるツボ」って何でしょう
ぢ「それでいっちゃん、ここはたぶん、みんなが知りたいことだと思うんですが」
い「はい」
ぢ「ゆるツボって結局何なのでしょう? いっちゃんとゆるツボちゃんが二人で活動するときのユニット名みたいなものですか?」
い「ゆるツボは、出張治療とセルフケアを扱う私の屋号です。今までの『Art Of Healing』という屋号は廃し、今後は『ゆるツボ』の五十嵐いつえとして活動していきます。」
ぢ「おお。じゃあこの先、いっちゃんの治療院がどこかに開業したらそこの看板は『ゆるツボ』になるんですね」
い「そうですね。治療以外にも、実は私は以前からセルフケアを積極的に発信しているんです。そして去年からセルフケア講座をオンラインで開催しています。この仕組みづくりや内容構成などが結構ハードで……。ゆるツボちゃんに事務作業をお願いしたのはそんなときでした。そこから二人でゆるツボ関連グッズの商品企画も一緒に考えることが増えてきたんです。まとめると、『ゆるツボ』というのは私の個人事業の屋号、そこの外部スタッフがゆるツボちゃんということですね」
ぢ「なるほど! すっきりしました。ゆるツボで扱うのは鍼灸マッサージとセルフケアの知識とそのグッズなんですね」
い「そうですね。表に名前が出るのは私ですが、一人でやっているという感覚はないです。ゆるツボちゃんの一言が大きく影響するので、事業における影の番長はゆるツボちゃんです。笑」
ゆ「恐れ多い…」
ぢ「あともう一つ不思議なのが、セルフケアを発信したら、いっちゃんの本業の鍼灸マッサージの仕事がなくなるようにも思うんですが、そこは大丈夫なんですか?」
い「それはないです。むしろ、セルフケアの範囲はしっかりと提案していきます。薬や病院の医療も頼れるようメッセージは常に発信しています。ゆるツボでは、一人で頑張らないで頼っていいことも伝えたいんですよ。からだの不調って程度があって、セルフケアはプロに頼るほどでもないレベルのことを、自分でまたは家庭で何とかできるという安心感を得るためのケア方法です。プロの仕事が減るってことはない。」
ぢ「安心感を得るための方法?」
い「そうです。安心感です。体にとって気持ちいいことっていうのは、自分は大丈夫だっていう安心感につながるんです。体が硬くなって縮こまっているときって、心も不安でがちがちになってますよね。体が気持ちよくゆるむと、心もゆるんできます。災害や流行り病で社会全体が不安に包まれているときは、個人も多かれ少なかれ影響を受けますから、誰でもみんな多少は体に不安が出ていると思います。セルフケアはそういう不安に対処する方法でもあります」
ぢ「なるほど! ゆるツボすごいですね!」
い「嬉しいです!ありがとうございます!」
ぢ「私も手ぬぐい買います! 今日はありがとうございました」