=心や身体の不調の対処法を調べたい時、「どこまで本当のことが書いてあるか」疑問に思ったことはありませんか?
効いた人の情報は多いのに、効かなかった人が取り上げられた情報は探しにくい。
この記事は、自分の手術をきっかけに、私が考える健康情報との付き合い方をまとめました。気になる不調について「治す方法」を探すことがあれば、ぜひご参考にしてください。
婦人科専門の鍼灸師、手術を受けました

まずは私の体験談を
2021年12月に手術を受けました。出血量を減らすために子宮内部を焼く手術です。3年前は大きくなった卵巣の一部を切除しました。
私は小さい頃から自分の体力や体調に自信がない(かといって大きな病気はない)まま成長しました。生理が始まった12歳からは生理痛に悩まされ、出血がない排卵期も排卵痛があったり、とにかく生理がしんどかった。昨年からは出血が増えて、今年の夏からホルモン療法で出血を抑えられるかチャレンジしたのですが、結果あまり改善されずに手術になりました。
そんな私が若い頃鍼灸マッサージ師の道を選びました。鍼灸マッサージには様々な流派があって、得意分野が違います。私は「女性の不調にも強い」流派を選びました。おかげで生理痛は改善して「ああ、これで長年の苦痛から解放される」と思っていました。でも、そうはなりませんでした。
前回の手術の後、当時お世話になっていた方から「心がまえと努力が足りていない」と指摘され、すごく響きました。私自身も自分の手法で改善しなかったことで「申し訳ない、悔しい」と思っていたから。「ごめんなさい」と誰かに向かって謝ってもいました。
でも自分でも責めてしまった結果、一つの疑問が生まれたのです。
「不調やケア方法とは、どういう付き合い方が正しいのだろう」と。
その頃からこの仕事を誇らしく思いながらも、疑問も感じ始めました。
鍼灸マッサージを頼ってくださる方は、当時の私と同じで「症状を治したい!」と利用されているはず。その気持ちに、何を伝えることが本当の正しさなのか。
「鍼灸マッサージで治ります?」をネット検索すると?



このような体験から学んだことをまとめます。
『鍼灸の適応』で検索すると、いろんなサイトで適応症を調べられます。その多くで『WHO』と記載されています。はい、言わずと知れた世界保健機構のWHOです。
鍼灸の適応の中に婦人科もあります。婦人科トラブルは生理痛だけでなく、妊活・生理と関係するマイナートラブルも含まれます。「鍼灸マッサージはこんな症状にも対応しているんだよ!」と、少し誇らしくなります。
ですが、個人的には注意が必要だと思っています。


今の時点では、鍼灸は科学的に「効く!」と言える段階ではないものが多くあるんです(残念ながら)。
ネットで検索すると、『WHO』の他にもすごく効きそうな表現が並びます。
「本当のところはどうなんだろう?」と怪しく思いながらも、すごく気になるし、試したくなります。天才も確かに実在しますし、経験もバカにできません。鍼灸の歴史は古くて、2000年の歴史で引き継がれてきたのは、単に技術ではなくて効いたからです。「科学的に効く」だけが全てだとは思いません。
ただ、私は自分の関わり方を振り返って思うのですけど、もっと詳しい情報が知りたかったです。
本当はどこまで効くのだろう? 効かないケースの話も。 正直に答えてくれる情報はなかなか見つかりません。
「治る?」と聞かれると、正直困ってしまう
鍼灸マッサージ師の立場で書きます。
この仕事をしていると、親戚や友人、近所の人などから「こういう症状を抱えていて、鍼灸やマッサージで治るのでしょうか」と、ご相談を受けます。
ふつうは一般的な話とこれまでの経験とを伝えます。
①鍼灸マッサージが適応しているか
②他にいい方法を知らないか
出張治療では様々な症状に対応してきたので、ある程度の不調が「どこまで効く」を経験の範囲内では答えられます。我ながら、便利な存在です。
ところが、反応はイマイチになることも。ガッカリする人もいます。
なぜでしょう。
私は自分の生理トラブルも含めて、③治らない可能性も伝えているからです。
「治る」はすごく難しい言葉で、真剣に取り組めば取り組むほど、治らないケースもたくさん目にします。その相談がどこに当てはまるかわからないうちは、簡単に言えない。そして「治る」が持つゴールのすり合わせが必要です。
鍼灸マッサージはいったい何を整えているの?
ここまで読まれると疑問が湧きますよね。
「効くの?効かないの?どっち??」と。
この疑問に私なりに答えたまとめがこちらです↓↓。
例えば2021年の冷え改善講座ではこのようにお伝えしました(一部抜粋)。本編ではツボと刺激方法も詳しくまとめてあります。


同じ症状でも、原因が違えば対策が違います。そして個人差が激しいということは、あまり知られていません。
婦人科に関して言えば、鍼灸で改善するケースもたくさんあるけど、他の処置をメインにした方がいい場合もあります。
ゆるツボはセルフケア講座で「薬や病院にも頼ろう」と伝えていますが、それは、鍼灸マッサージだけで対応することに不自然さを感じているからです。
ですが、薬や手術を選択しても、鍼灸マッサージやセルフケアを加えることはおすすめしています(このアドバイスが、よくネットで見る医師のアドバイスとは違う点です)。
わたしたちが用いているツボは、症状に1対1で用いているのではありません。1つのツボが、いろいろな症状にまとめて効いてくれます。不調が1つだけということはほぼなくて、生理痛の時はイライラするし、冷えるし、肌が荒れたりもします。
ガツンと全てに効いてくれなくても、いろいろな症状に少しずつでも効いてくれるなら、お得だと思っています。



手術をしましたけど、他の不調とうまく付き合えるようになったのは、鍼灸マッサージのおかげだと思っています。
「辛い症状を治したい」と願うとき、選択肢は残してほしい


上の資料では円のサイズを同じサイズにしましたが、投薬や手術を優先させた方がいいケースもたくさんあります。漢方の服用を選んだり、ふだんの生活の見直しが欠かせないケースもあります。
鍼灸マッサージを選ぶ方の多くは、なるべく薬や手術を使いたくなくて問い合わせてくださると理解しています。私自身もそのお気持ちもわかるし、引き受けてもいます。改善するケースも多くあるし、他の不調も併せて整えているので、不調に振り回されない方もたくさんおられます。
ただ、薬や手術という選択肢は手放さないで欲しいのです。可能性として残しておく方が、精神的にもゆとりが持てると私自身の経験から提案できます。
私自身も自分の手法で改善しなかったことで「申し訳ない、悔しい」と思っていたから。「ごめんなさい」と誰かに向かって謝ってもいました。
上の文章
いろいろな選択肢を持つと、自分を不要に責めずに済みます。これがどれほど人生を楽にするかは、鍼灸マッサージ師としても実感しています。
「治る」のゴールは、思っていることとずれることもあります。そう考えちゃうと何を選んでも怖い気もしますね。そんな時は一緒に考えさせてくださいね。